今月のおすすめ絵本

 

          毎月、おすすめの絵本を紹介します。機会があったら是非、ご覧になってみて下さい。

 

 

 

 

ぼくの見た戦争-2003年イラク

著者高橋邦典 <ポプラ社> 平成16年度日本絵本賞大賞受賞

著者が約1ヶ月の間、米軍(海兵隊)といっしょに寝食を共にして

戦争の真実の姿を訴えた写真絵本です。子供向けの絵本として、文には

ふり仮名がふってありますが、生々しいアメリカ兵、イラク兵の死体の写真も載っています。

また、家が誤爆され泣きじゃくるおばあさん、マットレスのないベッドで血だらけで横たわる

バグダット市民。そんな写真は戦争の哀しさを物語ります。

しかし、あるアメリカ兵がヘルメットの裏に家族の写真を忍ばせてあるのを見たとき、

私は、アメリカ兵もまた、この戦争の被害者であるようの感じました。
数々の賞を受賞した著者のHPはこちらです。

 

 

 

 

 

赤い蝋燭と人魚

酒井駒子 小川未明 <偕成社

大正10年に発表された小川未明さんの名作童話に、酒井駒子さんが情感豊かな絵をつけて、新しい世界を創り出した作品です。

物語は、わが子だけは明るいにぎやかな人間の街で育ってほしいと願う人魚の母親が、

娘を神社に捨てるところから始まります。その赤ん坊は蝋燭(ろうそく)つくりの老夫婦に

拾われ、大切に育てられます。そして、美しく成長した娘が絵をつける蝋燭には

不思議な力が宿るようになります。しかし、老夫婦はよこしまな香具師についそそのかされ、美しく成長した人魚の娘を見世物に売り飛ばしてしまいます。哀れな娘が

最後に残した3本の赤い蝋燭を取り戻しにきた、人魚の母の復讐は。というもの。

未明さんの、古く、詩的な言い回しが胸に深く残り、また酒井さんの幻想的で奥ゆかしさを感じさせる絵が一層物語を引き立たせます。とても、哀しく切ない物語です。

 

 

 

ペンキや

出久根育 文梨木香歩 <理論社

しんやは小さい頃に亡くなった父親と同じペンキ屋になります。

お客のもっとも望む色を探し出し、人々を幸せにするペンキ屋に…。

一人の職人の一生を、異国的なタッチの絵と静かな言葉で奏でる素敵な絵本です。

絵本というより短編の物語のようにしっかりとした梨木さんの物語は、

シンプルだけど力強く、出久根さんの独特で、惹き込まれてしまう絵は

物語に深みを出しています。この、2人の世界がぴったりと調和した作品は、まさに

名作といえるのではないでしょうか?私はこの本を読みながら、泣いてしまいました。

 

 

 

 

 

ギャシュリークラムのちびっ子たち

著者エドワード・ゴーリー 訳柴田元幸 <河出書房新社

この作品はAからZまでが名前の頭文字についた子どもたちが登場と同時に次々と

怪我や死に遭う。ただそれだけの、あっけなくも悲惨な話が韻を踏んだ軽快なテンポの

詩に乗ってス進むアルファベットブックです。階段から落ちる、画びょうを飲む、火だるまになる、線路で圧死、沼でおぼれる、オノでグサッ、ケンカのまきぞえ…。26人の子どもたちは、実に26通りの事故や犯罪に遭って、死んでいく。ここまで正面から当然のように子どもの死を陳列されると、いったいこれは何?と考え込んでしまいますが、意味はないのです。

ゴーリーの、少し不気味だけどなぜかクセになってしまう絵と、

韻を踏んだ独特の文に、はまってしまいます。

 

 

 

金曜日の砂糖ちゃん

著者酒井駒子 <偕成社

「金曜日の砂糖ちゃん」「草のオルガン」「夜と夜の間に」

この3つの短編が集録された作品です。酒井さんの、溜息が出るような可愛くて綺麗で、
淡いのに狂いのない絵が、とても幸せな気持ちにさせてくれます。

どの物語も酒井さん独自の、なつかしい様な、切ない様な、還りたい様な

純粋で深い、不思議な世界観で胸をいっぱいにさせてくれます。

私は特に「夜と夜の間に」がお気に入りです。

 

 

 

 

 

ちいさなちいさな王様

ミヒャエル・ゾーヴァ 文アクセル・ヘッケ

訳:那須田淳・木本栄 <講談社>

ある日、ふらりと「僕」の部屋にあらわれた、人差し指サイズの気まぐれな小さな王様。

王様の言うところによると、彼の世界では子ども時代が人生の終わりにあるらしい。

私達のところとは違って…。生まれたときは、体も大きくていろんなことを知っている。それが、大人になるにつれて、体がどんどん小さくなり、いろんなことを忘れる代わりに、夢が大きくなっていく。体はついに見えなくなるけれど、夢は途方もなく

大きくなっていく・・・。

物語の内容を取り上げると、それは童話のような子供向けのものに思われますが、

その中にはユーモアを含めた哲学、それ以上のものが、忘れかけていたものが

必ず見つかるはずです。ゾーヴァの描くイラストは、ストーリーのイメージそのもので、

挿絵を見るたびにその世界にどんどん惹き込まれてしまいます。

 

*今月のコメント*

今回は第一回目ということで、私の好きな作家さんの中で

お気に入りのものを中心に紹介してみました**

大人向けといわれるような作品が多いかもしれません。

でも、どの本も本当におすすめのものばかりです!!

是非ご覧になってみてください。

注)ここは今月の新刊を紹介するというものではありません